2023.03.03
令和4年度第4回「未来都市デザイン研究会」を開催しました
2023年2月27日(月)15時より、三重大学北勢サテライト研究会として、工学研究科の近藤早映准教授が幹事を務める「未来都市デザイン研究会※」の令和4年度4回目を開催し、12名が参加しました。今回は、2名を講師にお招きし、講演していただきました。
① 東京大学先端科学技術研究センター シニアプログラムアドバイザー 隈健一氏 「異常気象を読み解く」
長年勤められた気象庁でのご経験も交え、私たちの記憶に残る自然災害を示しながら、昨今の様々な異常気象についてご講演いただきました。大雪、台風、ゲリラ豪雨など、近年の発生件数の推移や被害など実際の例を振り返りながら、公共交通機関への影響や高速道路での立ち往生、熱中症の増加など、気象が及ぼす影響についても解説していただきました。さらに、天気図を用いて天気予報をするようになった19世紀から発展を続けてきた気象の研究を知ることで、現在の精度の高い気象予報がどのようにされているかを学びました。また、災害の発生予測や商品の売れ行き予測、高層ビルの影響の検討など、気象分野以外での多岐にわたる社会への影響を把握して対策を実施するための「気象データの活用」の将来性と課題について教えていただきました。
② 三重大学大学院生物資源学研究科共生環境学専攻 西井和晃准教授 「海洋気象と日本周辺の気象の将来変化」
記憶に新しい今年1月25日の大雪に注目し、報道されたニュースや観測データを見ながら、今回の大雪の特徴や影響、発生のメカニズムについてお話しいただきました。また、四日市で観測史上最低と言われた1月26日の気温についても、原因となる放射冷却の仕組みを解説されました。「冬型の気圧配置」「南岸低気圧」などの気象の用語や、「10年に一度の寒波」「100年に一度の雨」という表現など、天気予報でよく耳にするワードではありますが、詳細を理解できていなかった言葉を改めて学び直す貴重な機会となりました。さらに、地球温暖化と今後の雪との関係について、変動を繰り返している気象や、地域で異なる気温のパターン別に教えていただきました。
講演終了後は、自然災害に対する新たな危機意識をもった自治体が参画する気象データ活用の取り組み事例や今後の可能性について、各方面から意見交換されました。農業への影響や出張のための移動を左右する公共交通機関への影響など、日常生活で感じている気象にまつわる事もたくさん共有され、参加者それぞれの生活や仕事に引き寄せて気象を考えることができる時間になりました。また、特に「気象データを活用した防災」という、今後のまちづくりに必要な視点や取り組みのヒント・アイデアがたくさんちりばめられた研究会となりました。
未来都市デザイン研究会は令和5年度も取り組みを継続いたします。
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※「未来都市デザイン研究会」とは
今年度北勢サテライトで新たに設置された研究会です。近年の目覚ましいスピードで発展する科学技術により、我々の生活が便利かつ自由になった一方で、変革する都市生活や不確実な未来に戸惑いが生じるという背景を受けて研究会が立ち上がりました。公民連携で未来の都市デザインに活用可能な研究シーズや社会的視点を持ち寄り、フラットに議論しながら、参加者全員で身近な生活や地域社会の未来を考える機会を共有します。大学の研究シーズを投げかけるだけではなく、地域の皆様の関心のある様々な研究分野から、私たちの生活に落とし込みづらいトピックスについて一緒に考えるきっかけづくりを目指します。