2023.03.07
「北勢スマート農業研究会」第4回を開催しました
2023年2月22日(水)13時00分より、生物資源学研究科の野中章久准教授が代表を務める「北勢スマート農業研究会」の第4回をユマニテクプラザ308研修室にて開催し、研究・普及機関、企業、学生等を中心に、オンラインを含め16名が参加しました。
本研究会では、農業の発展に向けた地域農業分析に基づくニーズ把握と、三重大学発「自作型IoTシステム」の導入試験や農家参加型による研究会を通じ、同システムの改良と活用局面の拡大を図ります。今回は第4回として、野中准教授からの研究報告に加えて、3名の講師をお招きしてご講演頂きました。
はじめに、野中准教授より「IoTプロトタイピング・キットの応用~ハウス内の害虫対策に可能か?~」と題して研究報告がありました。現在、研究室で取り組まれている農家自作型のIoTシステムの仕組みや必要経費とメリット、実際の導入実験でわかったセンサの劣化などの運用の課題について紹介されました。さらに、安価で必要な機能を組み合わせて工夫・活用できる農家自作型のIoTシステムを今後「どう使うか」について、エディブルフラワーの害虫対策に関する実験を例に解説されました。
次に、株式会社赤塚植物園 研究開発部課長の長谷川幸子氏から「エディブルタイタンビカスの紹介【栽培の様子・問題点】」についてご講演頂きました。タイタンビカスは株式会社赤塚植物園が開発した新しい植物で、2020年には食用としても販売を開始されています。食用として、農薬を使わず虫の食害を防いで美しい花を得るためにハウスで栽培されていますが、ハウス栽培ならではの害虫の発生は避けられないことから、天敵による防除が行われています。しかし、現在の防除方法では安定した効果が見込めないことや費用がかかること、効果のない害虫も存在するなど、課題が多いのが現状です。野中准教授の農家自作型のIoTシステムの導入により、露地栽培との環境の差異を明らかにし、その違いを調整することでハウス栽培特有の害虫を減らしたいという今後の展望を教えていただきました。
続いて、データサイエンティストの濱田拓氏に、「データ活用プロジェクト例」をテーマとして、オンラインでご講演頂きました。先に長谷川氏より説明のあったタイタンビカスのハウス内の温度や湿度といったセンサーデータと、害虫の発生データの分析やその後の活用を例に、他分野で利用されているデータサイエンスのノウハウを応用するための注意点や実装に至るステップをご紹介いただきました。実験で得た膨大なデータを、多角的に見て、視覚的に捉えることで見えてくる新たな視点を、グラフなどを示して説明されました。異なるデータを組み合わせ複合的に見ることで、現在の研究の傾向や新たな研究の方針を見いだせるというデータサイエンスの可能性と魅力について学びました。さらに、分析することにとどまらず、ニーズに合わせて社会実装まで進める視点を持って、データをどう使うかという点まで考える重要性を教えていただきました。
最後に、農研機構スマート農業推進室 兼 野菜花き研究部門 上級研究員の武田光能氏より、害虫の季節適応、防除について解説していただきました。昆虫は変温動物のため、温度によって発育が変わること、発育日数と温度の関係、有効積算温度の法則について教えていただきました。また、露地とハウスの栽培方法の違いから発生する害虫についてと、その防除についてご紹介いただきました。さらに、タイタンビカスの害虫防除について、現在検討されているハウス内の温度との関係性の研究への期待と、その他に考えられる防除方法について言及されました。
講演後の意見交換の場では、各講演への質問の他にも、今後のハウス内での害虫防除の新たな方法の提案があり、それについても各方面から議論されました。EDA(探索的データ分析)の手法を用いて、増えるデータを解析しながら研究モデルを構築したり、リアルタイムで改善を繰り返すことのできる研究が、今後の農業分野でも求められていることが実感できる研究会となりました。
北勢スマート農業研究会は令和5年度も取り組みを継続いたします。