2021.12.13
第23回「北勢地域経営研究会」を開催しました
2021年11月17日(水)18時30分より、人文学部の青木雅生教授が代表を務める「北勢地域経営研究会」の第23回を開催しました。
本研究会は、三重県内の中小企業が顧客にも従業員にも地域にも「魅力ある企業」となるため、異業者交流も兼ねた若手中小企業経営者を中心とした学習機会を創出することを目的としており、2019年度から定例で月1回程度開催しております。研究会立ち上げの準備会を含め第23回となる今回は、中小企業に所属する方を中心に総勢10名の参加があり、勉強会を兼ねた活発な意見交換が行われました。
今回は7月以来の対面での開催となりました。初めに「事業プレゼンテーション」として、三重県内の自然を活用した再生可能エネルギー事業を営む株式会社ちかみつについて紹介がありました。太陽光や風力は再エネの中でも存在感が強いですが、運営主体次第では地元と切り離された存在となってしまい、騒音(低周波)や有害廃棄物、自然破壊といった負の側面が際立ってしまうことで、地元住民の反対に遭うこともしばしばです。再エネの普及は日本のエネルギー自給率向上のためにも不可欠ですが、技術面ではなくこういった社会的な側面から普及が進まない実情もあります。その点、この株式会社ちかみつは地元の自治会と連携し、発電収益を自治会の運営資金に還元する仕組み作りに力を注いでいます。
企業は社会的責任の観点から、自社の商品のサプライチェーン全体が環境にやさしいこと、つまり再エネ利用を求められる傾向が今後強まることは間違いありません。例えば三重県内に再エネ発電が充実していれば、環境意識の高い企業は工場を三重県に創設し、自社のサプライチェーンは再エネ由来の電力を使っていることをアピールポイントにできます。そしてそれは三重県の立場からは、再エネが企業誘致のアピールポイントになっているということができます。再エネは地域循環の最後の砦と位置付けられることもあり、地域住民、企業、そして農林水産業と、多方面との共存の可能性を秘める存在です。その点を留意しつつ普及促進に努める企業の活躍が期待されます。
そして今回の共通文献は大野裕之『ディズニーとチャップリン エンタメビジネスを生んだ巨人』(2021, 光文社新書)でした。チャップリンといえば20世紀初期のサイレント映画時代に名声を博したコメディアンであり、一方ウォルト・ディズニー・カンパニーは同じく20世紀初期の創業から、今や世界的なエンターテイメント企業に成長していますが、ウォルト・ディズニーは終生チャップリンのファンであり、人気キャラクターのミッキーマウスはチャップリンをモデルにしているといいます。そのビジネススタイルは第二次世界大戦に直面した際、戦争観の相違から分岐していきます。アメリカ政府が国内産業に戦時体制への協力を求め、反ナチスの立場で戦意高揚のプロパガンダ映画を制作したディズニーと、主張を曲げず国外追放されたチャップリンの、生き様と経営者像が一つの論点となりました。
また、日本のアニメは海外でも人気ですが、コンテンツ産業としてはアメリカの知財ビジネスのように盤石ではありません。かつてはモノづくりで栄えた日本にとって、アニメのようなコンテンツ産業は次の強みになることが期待されるも、アメリカの存在を前に知財ビジネスも不十分であることが議論されました。
本研究会は、月1回程度のペースで、今後も開催を予定しております。
以上