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2021.11.17

第21回「北勢地域経営研究会」を開催しました

2021年9月15日(水)18時30分より、人文学部の青木雅生教授が代表を務める「北勢地域経営研究会」の第21回を、オンラインで開催しました。
本研究会は、三重県内の中小企業が顧客にも従業員にも地域にも「魅力ある企業」となるため、異業者交流も兼ねた若手中小企業経営者を中心とした学習機会を創出することを目的としており、2019年度から定例で月1回程度開催しております。研究会立ち上げの準備会を含め第21回となる今回は、中小企業に所属する方を中心に総勢14名の参加があり、勉強会を兼ねた活発な意見交換が行われました。

今回は文献に入る前に「アイスブレイク」として、少人数のグループに分かれ「緊急事態宣言が出て良かったこと」というテーマで意見交換をしました。世間では緊急事態宣言の発出は「明るい話題」というよりは「暗い話題」に捉えられがちですが、今回の意見交換の中では参加者から前向きに捉える意見が多々聞かれました。その中には「安心を得られた」というようなものもあり、新型コロナウイルスへの「不安」が募る今の社会情勢とは相反して聞こえるかもしれません。
しかしこのアイスブレイクは次に共通文献『大人のひきこもり 本当は「外に出る理由」を探している人たち』(池上正樹,2014年,講談社現代新書)の内容を考えるにあたり、非常に有意義な意見交換となりました。タイトルから察せられる通り少々重い内容のこの本に「読み進めるのが辛かった」という感想も多く、しかし一方で「これまで引きこもりは自己責任だと考えていたけど、読んで考えが変わった」という感想もまた多く出ました。先ほどの緊急事態宣言をプラスに捉える意見も、外に出ることを是とする風潮や生活様式をコロナ禍が変え、引きこもっていることへの精神的圧迫が和らいだのでは、という考察に由来したものもありました。現実問題として学生についても、登校できないことへの不満を強調する報道が多く聞かれる一方で、登校しなくてよいことによって精神的に救われている学生の声が実際に相談窓口へ届いているそうです。

「大人のひきこもり」は社会問題であると共に、本研究会が扱うように経営学においては人的資源管理の問題に関わってきます。過労や鬱病などが引き起こされる労働環境の問題が指摘される状況の中、わが国でも近年「働き方改革」が進められていますが、残業削減のような表面的対応に留まらず、労働者が「たとえ小さくても社会の役に立てている」と感じられる労働環境の構築の重要性が議論されました。引きこもりは誰しも陥らないとは限らない問題であり、自分事として考えておく必要があります。

なお、今回は緊急事態宣言が発出されていること踏まえたオンライン形式での開催でした。そのような中にあっても、少人数でのディスカッションを、同じテーマでグループを変えながら複数回実施したことから、アウトプットとインプットを繰り返すことで参加者の意見が洗練されていく様子も窺えました。

本研究会は、月1回程度のペースで、今後も開催を予定しております。

以上