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2019.03.18

北勢サテライト「健康福祉システム開発研究会」第1回を開催しました

2019年3月1日(金)17時より18時30分まで、北勢サテライト 知的イノベーション研究センターにおいて、鶴岡信治教授が代表を務める北勢サテライト「健康福祉システム開発研究会研究会」の第1回を開催しました。

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本研究会は、健康福祉に関するシステム開発を目指し、主に企業、学校(教育機関)等を対象とし、国内において今後益々進むと予測される超高齢化社会で、高齢者の人たちが健康で健やかに生活できる環境を支援し、高齢者が抱える課題を解決していく方法を提案し、社会実装することを目的としています。第1回の研究会には、企業、教育関係者、大学生等を中心に、総勢19名が参加して開催されました。

研究会の冒頭では、鶴岡教授より、本研究会の設置に至る背景と必要性について説明がありました。

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(説明要旨)

日本は2030年には人口減少と相まって3人に一人は高齢者となり、急激な生産人口の減少により、深刻な労働者不足となると予想されています。特に三重県の高齢化率は29.0%(平成29年10月1日現在:総務省統計局人口推計)であり、全国平均の27.7%より高く、大きな社会問題となっております。

そこで、生産人口が減少しても、高齢者が肉体的にも精神的にも健康に生活できるように、生活の質(QOL)を維持し、高齢者の生活を支援するシステム・装置を産学官連携し、構想し、研究開発し、社会実装する必要があると考えられております。

本研究会の目的として、脚部のリハビリロボット、認知症の診断支援システム・訓練システム、電動車いすなどの研究開発と運用方法について、地域の関係者と意見交換しながら、課題抽出から社会実装までの一連の流れについて研究し、持続可能なシステム開発を目指すこと、また、このような一連の研究開発のプロジェクト・マネジメントができる人材の育成にも取り組んでいく。

続いて、各参加者の研究内容の紹介を行いました。

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1)みえ大橋学園 テクノグローバル設立準備室 岡博行 室長

 みえ大橋学園 医療福祉大学校 和田欣子 校長

みえ大橋学園、医療福祉大学校の概要についで、専門学校テクノグローバル設立についての紹介がありました。三重県の四日市を中心とした北勢地区に工業を発展させたいとの強い思いから、三重県初の工業系の専門学校を設立し、産業界発展の礎となる製造業で活躍できる高度な技術系人材を育成し、輩出していく。

2)鈴鹿医療科学大学 畠中泰彦 教授

ロボットスーツを用いたニューロリハビリテーション、パラリンピック選手へのトレーニング法等について紹介がありました。ロボットスーツを用いることによって、これまでリハビリで治らないとされていた症状も改善する傾向が見られています。今後の可能性を期待するものとなっています。

3)鈴鹿工業高等専門学校 機械工学科 打田正樹 准教授

リハビリ支援システム、可動域計測システム、ウェアラブルロボ等、他の研究機関と比較して、シンプルで安価な装置の紹介がありました。まだまだリハビリ現場ではロボット技術が認識されていません。使用者が面白くないと何もやりたくなくなると考えており、リハビリ現場に面白い装置を入れて使って頂くことでさらに良くしていこうと考えています。

4)三重大学医学部医学系研究科 認知症医療学講座 加藤奈津子 助教

失語患者に対する失語能訓練である、Melodic Intonation Therapy(MIT)についての紹介がありました。これまで脳梗塞等で失語が出てしまった患者に基本的に行われてきた通常の言語訓練は、3か月程度で頭打ちとなってしまいその後大きな改善が見られなくなるのに対し、アプローチの違うMITを使うことで改善効果がみられることも分かっており、MITを行うことによって発話自体の流暢性を増すことが期待できると考えられています。

5)三重大学地域創生戦略企画室 (機械工学専攻メカトロニクス研究室) 伊丹琢 助教

運動機能障害者の自立に向けた、自立支援ロボット装具とメカニカル装具についての紹介がありました。今後、ますます加速する高齢化問題により、肢体不自由による機能障害はどんどん増加すると考えられています。上肢機能障害者を対象とした残存筋力を手先に伝達する装着型ロボット(アクティブギブス)の開発を行うことで、日常生活支援のほか、筋力リハビリテーションとしての効果も期待されています。さらに現在は、下肢動作を対象としたロボット装具の開発も行っています。

6)三重大学大学院 電気電子工学専攻 情報処理研究室 鶴岡信治 教授

認知症の評価を行うシステムの開発についての紹介がありました。

タブレットを利用して簡単な図形を描画してもらい認知症の有無や進行度、タイプ等を自動判別するシステムや、表情認識機構を搭載したレクリエーションソフトにより、表情の変化を数値化し分析することで認知症の進行度を評価するシステム等です。これらを用いるメリットは、被験者がテストを受けていると意識することにより正確な評価を妨げることを防ぐことが出来る点と、継続的なテストの実施においても実施者の負担が小さい点があります。

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研究室の実例としては、情報処理を専門するソフトを扱う研究室でも、それを実際に動かすハードの研究を行う研究と合わせると面白くなっていきます。社会実装の点でもお互いに連携し進めていくことで、より現場で役に立つ技術として生かすことができます。

学生を老人ホームへ連れて行くと自分たちの研究が現場で生きていくこと、社会実装するとすごく喜ばれるということを知ることが出来ます。色々な学生にこのような体験の場をどんどん作らないと生きた勉強にはなりません。ただ、その勉強をするとそれが本当に社会になる核となり、老人に喜びを与えることが実感できるのがこの分野の研究であると感じています。技術を持った若い学生を介護の現場に出すこともこの研究会の意義であると考えています。

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次回の第2回「健康福祉システム開発研究会」は、5月17日(金)の17時から開催されます。内容は、先進事例の外部講師による講演会、研究テーマの深掘り(試作、評価、改善案)等を予定しています。

ゆくゆくは、老人ホームなどの介護福祉の現場、専門学校等の見学会の実施、共同して医工連携予算(AMEDなど)の申請等を行う計画をしています。本研究会への多くの皆様の参加をお待ちしております。